技術者には有能な人と有能でない人(つまり無能な人)がいます。
勿論、人間としての価値を言っているのではありません。
人にはそれぞれ個性があり、向き不向きがあります。
若いうちは色々とやってみて、その中から自分に適したもの(仕事)を見つけるのです。
このことは技術者に限りません。
歌うのは下手(脚注-1)だが、ピアノを弾くのは上手(脚注-2)な人がいれば、
逆に、ピアノを弾くのは下手だが、歌うのは上手な人もいます。
最近はどこでも自動的にドアが開くようになりました。
近づけば開いて、通りすぎれば閉まります。
でも中には、歴史のある場所や風格の有る家などでは自動でない戸もあります。
むかしはどこでも手で開けなければなりませんでした。
その場合、開けるのはいいのですが、キチンと閉めないことがあります。
そこで技術者に自動的に閉まるようにできないか、と相談しました。
技術者はバネをつけて自動的に閉まるようにしました。
閉まるようにはなったのですが、問題も発生しました。
子供など、力の弱い人は開けるのに苦労しますし、
強く閉まるので、ぶつかる音がうるさいし、傷むのも速くなりました。
再び技術者にそれを相談しました。
そうすると技術者は、バネが強いのが原因だからと、バネを弱くしました。
それで誰でも開けやすくなり、傷むことはなくなりました。
しかし、キチンと閉まらないことが発生するようになりました。
また技術者に相談しました。
今度はバネが弱いのが原因だからと、強くしました。
こう書くとはっきりわかりますね。
行ったり来たりするだけで、永久に満足なドアにはなりません。(脚注-3)
まさか、と思われるかもしれませんが、
実際に開発などの仕事をしていると、実はよくあることなのです。
やっている本人は気づいていないのかもしれませんが
一緒に仕事をしているまわりの人は気づきます。
民間企業ではそういう技術者には仕事が来なくなります。
誰でも失敗はしたくないですから、一緒に仕事をする人は慎重に選びます。
たまたま能力を発揮できない種類の仕事がある、というのはあることです。
その場合は、別の仕事に変わることを考慮した方がいいでしょう。
いずれ自分に合った仕事を見つけることができるでしょうから。
ところが・・
向いていない仕事にしがみつく場合があります。
給料がいい、学閥に縛られている、などの理由があるのでしょうが
それは自分だけでなく、周りの人々も不幸にしてしまいます。
現在成功している人の話の中には必ず過去の失敗がでてきます。
成功と同様に失敗も大切なのです。
「どのようにすれば、うまくいくか」
「どのようにすると、うまくいかないか」
の両方を知ることができるからです。
このことからも、失敗を認められない組織が、いかに駄目な組織かがわかります。